おっさんキューピット
母は父は研究中の事故で亡くなったのだと言った。
彼はその年で父の死など理解できるはずなく、黙って父の姿を見ていた。
母は相変わらず忙しかったが、彼のために時間を見つけては帰ってきてくれて話し相手になってくれた。しかし、母は父の話題は全くといっていいほど出さなかった。
彼が幼いこともあり、話題に出さなければ次第に忘れていくと思ったのだろう。
彼も母が悲しみを我慢して人の命を救うために頑張っていたことを知っていたので、母に合わせ続けていた。
父が使っていた部屋も最後に話した時から開けていない、一種のタブーとなっていた。

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