おっさんキューピット
「だが、お母さんの説得はできるのか?お前が医者になることを期待しているんだろ?」

なぜ自分の家について詳しいのかはこの際どうでも良いと思った。
青年は少し考え言葉に詰まった。母親は自分が誇りを持ってやっている仕事を息子にもやってほしいと思い、今まで厳しく彼を教育してきたことを知っているからだ。

「……何とかしてみます。やっと心からやりたいと思うことができたんです」

「彼女には落胆してもらいたくないので、説得してから自分の気持ちを伝えたいと思います」

「そうか。頑張れよ」

男からのアドバイスはそれで十分だった。

久しぶりに見た母は前に見た時と同じく疲れている様子であった。
青年は意を決して母に話しかけた。
「大事な話があるんだけど……」
滅多に自分から話しかけてきたことがない青年が話しかけてきたことに喜びを感じたが、それと同時に言いようのない不安が母を襲った。

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