おっさんキューピット
月曜日、待っていた男に男の子は話しかけた。
「科学博物館、すっごく楽しかったよ！」
「そうか。なんで泣いてるのかの理由は聞けたか？」
男の子は今まで極力彼女の引越しのことは考えないようにしていたのだろう。
男に問われると思い出したかのように答えた。
「うん、もうすぐ引越ししちゃうんだって。土曜日にお見送りに来てって言われた」
「それで、君はどうしたいの？そのままお別れだけ言うの？」
「どうって……？引越しを止めることなんかできないし……」
男の子は悲しげに首を傾けた。
「違うよ。頭がいいんだろ、君は？現代には科学の発展のおかげで電話っていう大変便利なものがあって、それがあればいつでもお話ができるんだ。言いたいことわかったよな？」
「わかった。電話番号を渡せばいいんだね。」
「でも、ただ渡すだけじゃ脳がない。俺に任せろ」
男の子はまたしても無邪気に笑う彼に乗せられた。

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