愛すべき彼女達 ~十人十色~

彩の場合

「寒い~
洋ちゃん、温かい飲み物が欲しい~」

木枯らしが吹くこの季節は、大の苦手。

寒いのも、もちろん嫌なんだけど

それ以上に嫌なのが風。

春の春一番や花風。

夏の涼風。

秋の秋風と、心地好いものや暖かさをもたらす期待の風等

嬉しいものもいっぱいあって

風そのものが嫌な訳じゃないんだけど。

木枯らしだけは…………絶対嫌!

日が陰るのが、早くなる冬。

六時ともなると、真っ暗になる。

沢山の家族で過ごしていた私には、一人住まいというのは

ホントに淋しいから。

それなのに………

真っ暗な家に帰って、ご飯を食べてたら

裏の方からガタガタと音がする。

もう、何を食べていたのかさえ分からなく成る程

不安になってくる。

ちょっと前までは、暗い冬の夜だって大丈夫だった。

だって、沢山の友達が一緒だったから。

泣き虫唯ちゃんにおしゃべり梓。

お嬢様の夏苗と切れ者の海晴。

他にも勝ち気な咲や呑気なコウと………

たんぽぽ幼稚園のメンバーが、入り浸っていたから。
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