愛すべき彼女達 ~十人十色~
「横山君………ちょっと手伝ってくれない?」

今日は日直。

職員室にノートを持って行かないといけない。

ノートを半分、彼の机に置いてニッコリ笑ってみると。

いつもの「チッ!」と舌打ちをした後、立ち上がる。

「………………もう一人は?」

眉間にシワを寄せたまま聞いてくるけど………もう怖くない。

だって、怒ってるのは私じゃなくて………もう一人の日直だから。

私を心配して怒ってくれてるだけだもん。

分かりづらい彼の優しさ。

「体調が悪そうだったから……帰ってもらったの。」

それだけ伝えると、怒りもおさまったみたいで

黙って三分の一だけ残して、持ってくれた。

黙って歩く廊下。

会話はないけど………嬉しい!




「……………………おい。」

珍しく話しかけてくる彼に、顔を上げると。

「片思いって…………言うな。」と。

えっ??

…………………………優しく聞き流してくれてたから…………

一人で盛り上がっていたけど………………

迷惑だったんだ…………。

「……………………うん。
…………………ごめん…………………なさい。」

分かりきっていたことなのに……………

みんなに受け入れてもらって…………浮かれすぎて………忘れてた。

彼が私を好きになる訳ないのに。

ただの………幼馴染みなのに………………。
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