愛すべき彼女達 ～十人十色～

生徒を帰らせると

「保健委員さん、ちょっと待っててね！
今すぐチェックするから。」と言って鍵をかけて戻ってくる。

「かな、おいで。」

先生のイスに座った春人さんは

向かいの生徒用の診察イスにおいでと、手を振っている。

「いかない！
どこも悪くないもん。」

あんなところに座って、良いことなんか絶対ないもん。

頑なに拒否する私に

「かな。」と少し低い声を出す。

これをされると………弱いんだよね…………。

渋々進み、イスに腰かけると

「こっちをちゃんと向いて。」と

両手で顔を挟んで固定し

「何を拗ねてるの？」って………。

…………分かってるクセに……………。



先日、私は春人さんと恋人になった。

誠ちゃんへの片思いから卒業し

春人さんをお兄ちゃんとして甘えて過ごした半年。

このまま恋に発展せずに終わってしまうかと思っていたのに………。

おせっかい桜と玲奈の作戦によって

おつきあいすることになったの。

事の起こりは春人さんの交通事故。

朝、登校しても見かけることがなく………

心配していたところに玲奈からメールが届いた。

『大変！！
事故っ！！！
交通事故だよ！！！
春人先生…………来てる？？』って。

………………………………来てない。