溺愛ホリック
一言だけボソッと、春に·····そう呟いて、僕はやっと思い出した。



あの時だ。



4月の入学式の日、桜を見上げる女の子が可愛くて思わず声かけたんだ·····。



髪の毛についた桜の花びら取ったりしたっけ·····。



なぜかその後逃げられたんだけど、逃げる前の真っ赤な顔がまた可愛くて·····。



わ〜まさかあの子がウミちゃんだったとは。



「思い出した!」

「ほんと·····ですか?」

「ほんとほんと。花びらの子でしょ?」

「そう·····です」

「可愛い子はちゃんと覚えてるんだ〜」



は!!



今の今まで忘れてたのに僕の口ってば嘘っばかり。



もう忘れないよ。



タカナシウミちゃん。



うん、可愛い。



でも嫌われてたんだ〜·····。



なんで嫌いなの〜·····。



「小鳥遊さんもう戻って良さそうね。一条くんも」

「「あ、はい·····」」

「痴話げんかならよそでしなさい」



先生にそう言われて、2人して保健室から追い出された·····。

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