先生は溺愛ダンナさま
あらためて思い返すと、彼に近づきたくて文芸部にも入部したんだったな。


「きゃっ」


その時、車内が大きく揺れて私はよろけて転びそうになる。


由香里先輩との話に夢中になっていて理人さんから手を離していた。


「石野さん大丈夫?」


「あ、先生すみません」


だけど、理人さんが咄嗟に手を差し伸べたのは、私ではなく由香里先輩の方だった。


私は、なんとか転ばないですんだけど頭から冷水をかけられたようにショックだった。


そして、その後の理人さんの言葉にも耳を疑った。

「石野さん、気をつけて。僕につかまっててくれていいからね」


ニッコリ笑った理人さんを見て由香里先輩は恥ずかしそうに頬を染める。

< 15 / 103 >

この作品をシェア

pagetop