悔しいけど好き
「今はまだ付き合ったばかりで早いと俺も思ってます。でもいずれ、近いうちに改めてご挨拶に伺います。その時は凪さんを俺にください」

「たっ…鷹臣?」

手を着き頭を下げる鷹臣に何をしてるんだと肩を揺する。
改めてご挨拶も何も、俺にくださいだなんて、いきなりの結婚の挨拶みたいに言い放つ鷹臣に唖然としてる面々。

結婚まで考えてたなんて…って、いやいや、付き合ったばかりで、しかも私にプロポーズも無しで家族に挨拶する?普通?

「あらまあ、楽しみねえ」

「改めて何て言わずに結婚しちゃえば?」

のんきなおばあちゃんと湊斗の言葉に皆我に返りアタフタしだす。
お父さんは酔いが冷めたように青い顔をして目を泳がせていた。

「あ、いや、まあ…心の準備をさせてくれ…」

お父さんの本音がポロリと溢れる。

「婚約の予約といったところかしら、おめでたいわね」

お母さんは意外と嬉しそうにしている。

「凪を手懐けられるのか?こいつ結構扱いずらいぞ?」

「おにい!」

またちゃちゃを入れる海里兄さんに思わず小さい頃に呼んでた言い方になってしまう。

「凪を幸せにしてくれないと許すことはできないな」

周くんが海里兄さんより兄らしいことを言って心配そうに私を見つめる。

「幸せにします、必ず」

私の肩を抱き寄せまた好戦的な目で周くんを見つめる鷹臣になんて言っていいかわからない。

前祝だ!と海里兄さんが皆にお酒をついで回り、またがやがやと話に花が咲く。
こういう時ムード―メーカーな海里兄さんが役に立つと鷹臣と周くんに挟まれた私はちょっとほっとした。

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