悔しいけど好き

奴と我が家

「そろそろ帰るね」

ワイワイガヤガヤしてるうちに夜は更け、周くんが帰ると立ち上がった。
相当酔っぱらってる海里兄さんが凪が見送れと私を急き立てる。

「ちょっと行ってくるね」

笑顔を絶やさないくせにピリピリしてる鷹臣を残し周くんに付いて行く。

「凪、ここでいいよ」

玄関先で靴を履いた周くんが振り返り気を使ってくれたけど私はお母さんの突っ掛けを履いて周くんの腕を取った。

「そこまで送ってく」

お母さんの趣味のガーデニングで咲き誇る花々の間を通りの裏手に回る。
畑に囲まれてる我が家から周くんの家に行く最短距離だ。
うちに来るたび周くんはここを通る。

「凪、ホントに、綺麗になったね」

「ふふっ周くんそんなお世辞言っても私には通用しないよ?」

周くんの腕を取ったまま歩く私に優しい目を向ける周くん。
昔から海里兄さんといつも一緒に居てもう一人の兄のように慕っている周くんは私の初恋の人だ。
もう、昔のこととはいえ久しぶりに会うと懐かしい想いが込み上げてくる。

「本気で言ってるのに」

苦笑いの周くんが立ち止まり私たちは見つめ合った。
吸い込まれそうに綺麗な瞳がぽつぽつと光るガーデンライトに照らされて浮き上がる。
ふと、目を逸らしたのは私のほうで、またふふっと笑った。

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