悔しいけど好き
顔だけ後ろを振り向き言うとにょきっと物陰から出てきた鷹臣が私の横に立った。

「あの人と、随分親し気だな」

「言ったでしょ?第二のお兄ちゃんだって」

「兄弟関係にはとても見えない」

嫉妬してるのがありありな不機嫌な鷹臣を見上げちょっと可愛いと思ってしまった私は意外にSっ気があるのかもしれない。
もっと嫉妬に歪む顔を見たいと思った。

「そりゃそうよ、血は繋がってないもの。周くんは私の初恋の人なの」

「初恋?…彼は凪の元彼だって聞いた」

「やっぱり、湊斗が言ったのね。高校生の頃の話よ」

眉根を寄せる鷹臣に追い打ちをかけるように耳元に手を当てこっそりと教えてあげた。
これは海里兄さんでも知らないこと。

「私のハジメテはみんな周くんが持っていったの」

「え!?…はじめてって…」

もっと怒るかと思ったら困惑してる鷹臣にちょっと拍子抜け。
嫉妬に駆られた鷹臣に後で仕返しされるかもなんてことはすっかり頭から抜けていた。

「…今でも好きなのか?」

意外に弱弱しい声を出す鷹臣に一瞬キョトンとした顔になる。
しゅんとした鷹臣が今度は捨てられた子犬みたいでまた違った可愛さを醸し出してるからつい笑ってしまう。

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