悔しいけど好き
「私全然覚えてないけど…話とかしたっけ?」

「いや、お前は俺の斜め前にいたんだよ。ただそれだけ」

「それで、気になってたって?」

「うん、気になった。面接試験の時も見かけたし、入社式で見かけた時は同じとこに就職できたと思って嬉しかったな」

唖然…まさか私の知らないところで鷹臣に見られてたなんて全然気づかなかった。

「その頃はまだ気になってただけだけどな。どこに行ってもお前が目についた」

「…それ、気に入らないからの間違いじゃないの?」

気に入らないことをした覚えもないけど。
鷹臣はぱくりとパフェを食べてちょっと考えてから答えた。

「…いや、気に入らないのはその後からだな」

「なにそれ?」

「そりゃそうだろ?同じ営業に配属されて、はじめっから闘志むき出しで俺に突っかかってきただろ、俺なんかしたかとちょっと悩んだぞ?」

「あ、ああ~…」

あの頃、優秀過ぎる鷹臣と同じ配属先に付いて比べられるのが嫌だった。
正木部長の指導の元、期待してるぞと言ってくれた言葉にも応えたいと思ってがむしゃらになって頑張った。
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