悔しいけど好き
「優秀な鷹臣に初めから叶わないって思ったから…負けて堪るかと思ってライバル心むき出しにしてたのは確かね」

「優秀って…俺はそうでもないぞ?」

「ご謙遜を。上司の覚えも目出度く、取引先にも気に入られて独り立ちも早かったくせに」

「まあ、そうだな」

ニヤリと笑ういつもの自信満々な顔。
その顔を見る度悔しかった。
絶対こいつを超えてやると仕事にのめり込んだ。
ついその頃の事を思い出して顔が歪む。

「その、悔しそうな顔を見る度優越感に浸ってたな」

「なっ、悪趣味!」

やっぱりこいつ悪趣味だ!
ニヤニヤする奴を睨み汗のかいたミルクティーフロートをちゅうっと飲んだ。

「だけど、それがどんどん沈んでいって、目も虚ろでフラフラしてるくせに意固地になって仕事するようになって心配になった」

「え?」

「お前がそんなに自覚がないなんてビックリだぞ?ほんと幽霊みたいだった。外回りに行くときぐらいだったな、きびきびしてたのは」

「そ、そう…」

またその話を持ち出されてぐうの音も出ない。
ばつが悪くて下を向く。
よっぽど病んでたってのはもうわかってますから言わないで~。

「気になって、ほっとけなくて、何とか助けたいと思った。その時はっきり自覚したよ、俺はお前が好きだって」


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