悔しいけど好き
顔を上げれば最近よく見せる優しい顔で微笑んでる鷹臣と目が合う。
ちょっと恥ずかしくて目を逸らしまたミルクティフロートを吸い込んだ。

「でもさ、お前は俺を嫌ってるし、言うこと聞かないし噛みつくし、俺の恋は実らないなってちょっと諦めてたんだ」

「え?」

「だけど、あの年度末の日、泣いて悔しがるお前がほっとけなくて、家に連れていけば縋りついて離れないし、お前の寝顔見てたらやっぱり好きだって気持ちが大きくなって帰れなかった。やっぱり諦めきれなくて絶対お前を振り向かせてやると思った。あのキスマークは俺の宣戦布告だった」

あのキスマークを見つけた時ただの嫌がらせだと思って憤慨したものだけど、そんな意味が込められてたなんて気付かなかった。
考えてみれば、あれから仕事でも関わることになって、うちにまで上がり込んでそれが当たり前になって、いつの間にか好きになってた。
結局、私は鷹臣に仕事も恋愛も敵わず負けてしまったってことかな…。

「なんかやっぱ、悔しい」

「え?」

「何ひとつ鷹臣に勝てやしない」

頬が高揚するのを分かっていながらそっぽを向いて可愛くないことを言う。
やっぱり私は素直じゃない。
そんな私に奴は吹き出す。

「ふっ、充分勝ってるよ凪は。俺をこんなに夢中にさせておあずけ食らわせてるんだから」

「はあ?」

「今までどれだけ我慢してたと思うんだ?俺の鋼の精神は崩壊寸前なんだ、帰ったら、覚悟しろよ?」

ニヤリと今までと違う妖艶な目で私を見据えた鷹臣に私の体はぞくりと疼いた。
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