悔しいけど好き
その直後にクククっと、笑い声がまた脳内に届きぎゅっと更に腕の力が強まったと思ったら解放された。
完全にからかわれてる!
真っ赤になった顔で笑う神城をぎろりと振り向き睨んだ。

「ふっ、そんな睨むなよ。タオルどこ?いつまでもそこにいると目の前で脱ぐけど?」

「…そこの引き出し!もうなんなのよあんたは!勝手にして!」

ニヤリと笑う神城をもうひと睨みし、バタンと激しくドアを閉めキッチンに向かい意味もなく水をジャージャー出して項垂れた。

やだもう…顔が熱い。
さっきからドッドッドッとこのまま壊れるんじゃないだろうかと思えるくらい今までに無い激しい鼓動で胸が苦しい。
ドキドキなんて可愛らしいもんじゃない。

何であいつに翻弄されなきゃならないの!?
冗談じゃない!振り回されてたまるか!
今度こそ毅然とした態度でさっさと家から追い出そう!

心臓が落ち着いてくると、ふん!と鼻息荒く気合いを入れて料理に取りかかった。

あいつは20分くらいであがったらしい。
がさごそと物音が聞こえる。
ちょうど料理も作り終えるところでお味噌汁をお椀に入れる所だった。

あ、でも待てよ?
あいつのことだまた私をからかうつもりでバスタオル一丁で出てきやしないか?
も…もしや裸でとか…いやいやそれはさすがにないな。

「お、味噌汁のいい匂い」

「わあっ!」

考え事をしていると真後ろで聞こえた声にびっくりして手元が狂う。
お玉に入っていた熱々の味噌汁がお椀を持つ手にかかってしまった。

「あつっ!」

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