悔しいけど好き
「おい、大丈夫か!?」

お椀は転げ慌ててお玉を鍋に戻しお椀を拾おうとするとその手をむんずと掴まれシンクに持ってかれる
ジャーっと、流れる水道に火傷したらしい左手を突っ込まれた。

「何してんだよ。火傷は直ぐに冷やさないと!ほんとにお前は危なっかしいな!」

「や、危なっかしいって…。大丈夫だよこれくらい。それより床の汚れが…」

「そんなもん後でいいだろ!それより火傷の痕が残ったらどうすんだよ!」

い、いや…そんなに怒らなくても…。

反論も許さないというようないつに無い剣幕で見下ろされて口ごもる。
手と肩を押さえられ背中から奴の体温を感じてどうしていいかわかんない。
幸い味噌汁はまだお椀に入れる前だっらからそんなに床は濡れてないけど睨む神城が気になって火傷の痛みもわからなかった。

その後、「お前は手を冷やして座ってろ」と冷たくしたタオルを手に巻かれ、カウンターに私を無理やり座らせ、ささっと床をきれいにして、後はよそうだけだった朝ごはんの用意をてきぱきとこなしてる。

そういや奴はちゃんとワイシャツとズボン姿でいて、まだ少し濡れている髪の毛がいつもは顕にしている額を隠してる。
案外前髪下ろすと幼く見えるんだなと、そんな神城の姿ををボーッと見ながらはっ!と気付いた。

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