悔しいけど好き
なんて奴だ。
結婚しておきながらまだ凪を愛してるだって?
そんなの今の奥さんや子供が可哀そうだ。

「もちろん今の妻も、生まれてくる子供も愛している。凪は特別なんだ。子供の頃から培ってきた想いは一生消えない。そういうもんだろ?」

理解しがたいが幼馴染と言っていた長い年月が二人の絆となってるとしたら、じゃあ凪は?
凪の気持ちはどこにある?
結婚してしまった奴を今でも好きなんじゃないか?
不安と疑念とそうなったら俺はどうしたらいいんだと頭が混乱する。
胸がかきむしられる思いで眠る凪を見つめ握った手に力が籠る。

「凪には俺の気持ちは言わないでくれよ。これは一生伝えないつもりだから。だけど君には知っていて欲しい。ここに凪を愛する男が一人いることを」

「…」

「忘れないで。凪を悲しませたら許さない。妻と子どもと別れたとしても俺が凪を奪いに行く」

「…あんたが奥さんと子供悲しませるような事すんなよ!」

「はは、それもそうだね。さあ、着いた」


ギリリと血が出そうなほど奥歯を噛み締め奴を睨む。
余裕そうに微笑んだ奴と目が合った時は殺意が生じた。


絶対こんな身勝手な男に凪を取られたくない。

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