悔しいけど好き
嘘つきな奴
「よう、お帰り」
「海里…」
ここは羽柴農場の農道。
自分の家に帰る最短ルート。
夜中に帰って来た俺を畑の真ん中で待っていたのは凪の兄、海里だった。
有無も言わさず車の助手席に乗り込む海里に苦笑いが溢れる。
俺の行動をわかっての待ち伏せに恐れ入る。
「ご苦労だったな。わざわざ車出してくれてあんがとよ」
「ん?なんのこと?」
「とぼけんなよ。凪のことが心配で居もしない叔父に会いに行くなんていって二人を監視してたんだろ?」
ん?と首をかしげてニヤリと笑う海里にやはりバレていたかと観念する。
そう、叔父に挨拶しに行くなんて真っ赤な嘘だ。
凪が心配で彼を見定めるために送ることを提案した。
「まあ、随分俺に対して態度悪かったし独占欲ありすぎて凪が苦労するんじゃないかと思ってね…」
「全く、お前は昔から実の兄の俺を差し置いて凪に甘かったからな?過保護もそこまでいくと病気だぞ?」
くつくつ笑う海里。
その目元が凪とそっくりでついドキリとする。