悔しいけど好き
態度にはあまり出さないが海里だって凪のことを心配してる。
何かあったら烈火のごとく怒り出すのは海里のほうだろう。

頭の後ろで手を組んで外を見つめた海里が思い出したようにクスリと笑う。

「お前は昔からいいこちゃんで嘘つきだからな~」

「え~酷い言いようだな?」

そう言いながら不思議と怒りは湧いてこない。
ただ図星を突かれているだけ。
俺は聞き分けのいい大人のフリをし平気で嘘をつく。自分を偽り本心を明かさない。
海里にだけはいつも見透かされてたな。

「ま、今さらだしな、周だから仕方ないか」

「なんだよそれ」

今も俺をじっと見て深層心理を読んでるのか?
あまり今の心境を読まれたくないんだけどと苦笑い。
その点凪は全面的に俺を信用して疑うことをしない素直な子だった。
そんな凪にも大人の男を演じていた。今も昔もみっともない自分の姿は見せられない。

「まあ、あんまり鷹臣を苛めてやってくれるな」

「なんだよ、幼馴染みの親友よりあの彼の肩を持つのか?」

苦笑いで文句を言えば海里も笑って返す。

「そう文句言うな。案外気に入ってんだあいつを」

「はあ…凪も海里も取られるみたいで悔しいな…」

「ばーか、お前みたいな嘘つきをわかってやれるのは俺くらいだぞ?付き合い長いんだからそれくらいで妬くな妬くな!」

わざと拗ねたフリを見せると、毎度のことながら首を羽交い締めにされて、豪快に笑う海里につい負けて笑い出す。
ほんとに海里には敵わない。
何も言わず笑う海里は俺をわかってくれる唯一無二の親友だ。
そして、俺の心を掴んで離さない可愛い凪。
俺が幸せに出来ないのが悔しいけど凪が幸せならそれでいいんだ。
正反対の性格の兄弟で腐れ縁の関係だけど二人とも今でも俺にはなくてはならない存在だ。
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