悔しいけど好き
神城が出てきたら一人分のご飯を出して「これ食べてさっさと帰ってよね!」と言ってやるつもりだったのに、しっかり二人分用意されちゃってる。

はぁ~とため息が出る。
こいつといると思惑通りにいかなくて調子が狂う。

「よし、食うか!」

カウンターの私の隣に座り行儀良く手を合わせいただきますと言う神城につられ私も手を合わせいただきますと小さく言う。

タオルが邪魔で外すと「おい、タオル外すな!」と止められ「もう大丈夫だから!」とひと悶着した後火傷の状態を見れば手の甲の親指の付け根辺りが少し赤くなってるだけだった。
これくらいなら水ぶくれにもならずに直ぐに治る。
渋々諦めた神城は賞味期限が間近に迫ってた卵全部使った卵焼きに箸を伸ばす。
思わずどういう反応をするのか気になってじっと見つめていた。

「旨っ!ほんのり甘味が俺好みだ!」

感動したようにそう言ってばくばくとご飯を食べる横顔を見て、「俺好み」は余計だと思いながらホッとした。
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