悔しいけど好き
お盆休みの浮足立った雰囲気も収まってきて日常が戻ってきたころ。
私と鷹臣もいつも通りに仕事をしてプライベートなことは会社では一切話さないように気を付けた。
相変わらず鷹臣は週の半分以上私の家に入り浸ってるくせに会社ではおくびも見せずにバリバリ仕事している。
私もそこは鷹臣に倣って頭を切り替えないと!と何時にも増して仕事に集中した。
そんな中、久しぶりに鷹臣と意見が合わずに水面下でやり取りしてたんだけども我慢ならずに鷹臣をいつもの資料室に呼び出した。

「何だよ、俺忙しいんだけど?」

「それは分かるけど、これ、考え直して。溝口さんはこんなんじゃ納得しないわよ?」

「それはそのままでいい。いい加減少しは違うことにも挑戦しないと進展しないぞ?」

「だからって飛躍しすぎでしょ!」

ああだこうだと言い合ってるとじりじりと壁際に追い詰められ、バンッと左手を着いた。
びくっと肩を跳ねらせまた鼻をかじられる!と、咄嗟に持ってたファイルを顔の前に出して防御する。
鷹臣の顔がグッと近づいてきて条件反射で目を瞑った。

・・・・

シーンと静まり返った室内。
そーっと目を開けると至近距離で鷹臣が自分の口に人差し指を着けにやっと笑った。
まるでシーっと静かにしろと言ってるみたい。

「?」

なに?と思っていたら横のドアノブに手を掛け一気に開けた。

「うわっ」「きゃっ!」「おっと!」

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