悔しいけど好き

彼氏彼女の自覚

ある日、鷹臣は外出中。
午後に一回戻ってきて必要書類を持ってまた外回りに出かける。
その書類を用意し鷹臣の机に置くと、うーんと腕を伸ばし伸びをした。
根を詰めて書類と資料作ったからなんだか頭が回らない。
ひと段落ついたしちょっと甘いものでも摂取しようと立ち上がった。

廊下に出て右側に小さな丸テーブルやベンチがあるちょっとした休憩スペースになってる自販機コーナーがある。
そこにあるカップで出てくる自販機のクリームたっぷりの濃厚ココアが私のお気に入り。
秋晴れの今日も天気が良くて暖かい。
アイスココアを飲もうと思って行くと先客がいた。
華奢で優美な後ろ姿からして美人と分かるその人がふっとこちらを振り向いて一瞬固まった。
秘書課の荒川さん。
かつてこの場所で鷹臣に告白しキスまでした人だ。

振り向いた彼女も一瞬驚いたような顔をする。
やっぱこの人社内一美人と言われるだけある。
大きな目と小さくぽってりした唇はローズピンク色の口紅で彼女に似合ってる。
確か一つ上の彼女は私の事知ってるのだろうか?
鷹臣が私の事好きなの知ってて告白したって言ってたから顔もばれてる?
まあでも、荒川さんは美人で有名だけど私は目立たない存在だし名前だけ知ってるってことかもしれない。

「お疲れ様です」と言ってみたものの相手は何も言わず会釈だけして出てきたカップを取り上げその場を譲ってくれた。
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