悔しいけど好き
「凪ちゃん?どうしたの!?」

とりあえずポケットに入ってたハンカチを取りだし後悔しながら掛かった所を拭いていると美玖さんが来て私の惨状に目を丸くする。
ああ、とんでもないとこ見られちゃったかも。
どうしたものかと思わず苦笑い。

「あ、あはは…ドジってこぼしちゃいました。いい年して恥ずかしい…」

「え?今秘書課の荒川さんが慌てて走ってったけど?」

「ああ、彼女は…私のドジっぷりに驚いただけです」

「…凪ちゃん?」

訝しげに見られてつい目を逸らす。
それより床掃除しないと、それに自分のハンカチである程度拭いたけどこの格好はまずいから着替えないといけない。

「あ~雑巾どこですかね?綺麗にしないと怒られちゃいますね」

へへっと笑うとふうっとため息を付いた美玖さんは明らかに仕方ないなという顔で私の肩に手を置いた。

「そんなことは私がやっておくから。早く着替えなきゃ、腕も…火傷してるんじゃないの?赤くなってる」

「あ、大丈夫です。じゃあ、すいません美玖さんちょっと着替えに帰ります。正木部長にも伝えてください。すぐ戻りますんで」

「うん、わかったわ」

申し訳ない気持ちで手を合わせ美玖さんを残し非常階段に向かった。
さすがにこんな汚れた格好でエレベーターには乗れない。
ああ、荒川さんに謝らないと。
ひと言多い私の言動に荒川さんが怒るのも無理はない。
コーヒーかけられても文句は言えないと落ち込む。
入れたてのコーヒーって意外に熱いようで左腕がジンジンと痛み出してきた。
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