悔しいけど好き
「っ!わあっ!」

「遅い!」

お風呂をガラッと開けたら目の前に鷹臣がいてびっくりした。
脱衣所は電気を消していたから腕を組み仁王立ちしていた鷹臣に気付かなかった。

「なっ…なにしてんのよ」

素っ裸の心許ない私は声も震えて、ため息を着いた鷹臣がタオルをふわりとかけてくれた。

「もう少し遅かったら押し掛けようと思った。本気で沈んでるかと思ったぞ」

「あ…そう?」

だいぶお風呂に長湯してたらしい。
私の頭を拭きながらぷんぷん怒ってる鷹臣を不思議そうに見ていた。
鷹臣って怒ってるくせに甲斐甲斐しいことをする。

「何を悩んでる?俺に話せないのか?」

何でもお見通しの鷹臣は心配そうに顔を覗き混んできて思わず目を逸らした。

「何言ってるの?それより鷹臣もお風呂に入りなよ」

「凪?」

タオルを奪い返し振り返る鷹臣を振り切り脱衣所を出ていく。
鷹臣は諦めたのか追いかけることもなく暫くしたらシャワーの音がした。

着替えてソファーでまたボーッとしてるとお風呂から上がってきた鷹臣が何も言わずに私を抱き込むように座り黙っている。
まるで私から話し出すのを待ってるかのよう。
私は鷹臣の腕に手を乗せ体を預けた。
暖かくて安心する鷹臣の腕の中。
この腕がいつか離れていくことがあるのだろうか?
今が幸せすぎて手放す時が来るのがやっぱり怖い。
何も話せず私は目を瞑った。

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