悔しいけど好き
昔、私たちの座り位置は逆だった。
私が左で右があいつ。
字を書く度、何かする度、奴の左肘が当たっていちいち文句言ってた。
「ちょっと、もっとそっち行ってよ、肘が邪魔よ」
「しゃーねーだろ、俺左利きだし。お前こそ端なんだからもっとそっち行け」
小さな声でいがみ合ってると正木部長の怒号が飛んだ。
「お前ら!毎度毎度ごちゃごちゃ煩いぞ!二人とも席を代われ!」
それからというもの今の座り位置が定着し、小競り合いも無くなったんだけど、私はアシスタントに変わったからこの位置で良いのかちょっと悩んだ。
そんなことはお構いなしに会議は始まり、私が改めて神城のアシスタントになったことを正木部長が公表して、みんなの生暖かい目が私に注ぐ。
皆良かった良かったと一様に頷いているけど、何が良かったのか私には分からない。
奴の下について良かったも何もない気がする…。