悔しいけど好き
鷹臣…鷹臣…

ああ…愛しいやつの声がする。

「ぷっ…鷹臣ったら、こんなところで寝てたら風邪引くよ?」

「ん…?あ…凪、おかえり」

夢うつつの中で凪の笑顔が見えて無意識に腕を伸ばし囲いこむ。
凪の温もりに安心して微睡んでいるとがぶっと思いっきり鼻をかじられた。
一気に目が覚め痛みで涙目になりながら凪を睨むと、どこか吹っ切れたような清々しい顔で得意気に笑っていて一瞬目を見張った。

「ふふん、目が覚めた?」

「…いってーなこのっ…」

危険を察知して逃げようとする凪を逃すわけもなく、すかさず捕まえ引き寄せる。
悪いな、鼻をかじるのは俺の専売特許なんだよ。
そう思いながらも向かった先は唇へ。

「うっ…ん…?」

かじられると思って硬直した凪の体はすぐに溶けて甘い香りに酔いしれる。

「いちごの味がする」

ふと呟いて凪の蕩けるような目と合った。
あ、凪のこういう顔が堪らないなとつい欲望が顔を出す。

「うん、いちごたっぷりのムース食べた。すぐそこの気になってたレストラン美味しかったよ、今度一緒に行こう?」

可愛いことを言う凪に嬉しさと愛しさが込み上げる。
凪と二人ならどんな所だって連れてってやる。

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