悔しいけど好き
「神城さんにはあなたに二度と会うなと言われたけどどうしても謝りたくて偶然を装って会えないかと度々ここに来てたの。ここのコーヒーも気に入ってて…」
「私も謝りたいと思ってたんで良かったです!あ、私もこの自販機のココアが好きなんですよ!意外と濃厚で美味しいですよね!」
思わず同調してニコニコというと一瞬驚いた荒川さんにふっと笑われた。
「ほんとお人好し。…神城さんが守りたくなる気持ちがわかるわ」
「え?」
小さい声で聞き取れなくて首を傾げてると、テーブルに置いたコーヒーを手に取った荒川さんは歩き出し私の隣に立ち止まると真剣な顔をして見つめられドキドキした。
「袴田専務に気をつけて。あの人あなたに興味を持ってしまったみたいだから」
「え!?」
また袴田専務の話が出て驚いているとそれだけ言って荒川さんは行ってしまった。
どういうことだろうと暫く荒川さんの去った跡を見つめる。
ほんとに袴田専務とやらに興味を持たれてしまったのか。
何がそんなに興味を持ったのかわからない。
そして気を付けろと言われても…。
「あ~顔もわかんないのに気を付けようがないよ!」
思わず声に出し頭を抱える。
まあ、襲われることも無いだろうしちょっかい出されるくらいだろう。
きっとすぐにつまんないと帰ると思う。
考えてもしょうがないと諦め久々のココアを買って甘い香りにうっとりした。