悔しいけど好き
「周くん前に言ってたじゃない?私達はまだ若いしこれからもいろんな出会いがある、運命の相手を決めるのはまだ早いって」

「あ、ああ…そんな事言ったかな?」

「え?覚えてないの?それで私達別れたじゃない。それから突然周くん結婚したって海里兄さんに聞いてびっくりしたけど、ああ周くんは運命の人見つけたんだなと思ったんだけど?」

別に文句を言いたい訳じゃない。
昔の想いを思い出しても何も感じなくて、ああ私はちゃんと過去の恋愛を消化出来てるって思った。
きっぱり吹っ切れてて周くんが幸せになって良かったと心から思えたことが嬉しかった。

「ごめん凪…あの頃は自分の事に精いっぱいで凪のことを思いやれなかった…」

「いいよそんなの当たり前でしょ?逆にごめんね、寂しいとか逢いたいとか散々言って困らせたよね?のめり込みやすい私の悪い癖だよね。重い女だったって自分でも思う」

責任感じてるらしい周くんの声にへらっと笑って何でもないように明るく言った。
ほんとあの頃は周くん一筋の私の想いは重りになって周くんを追い詰めてたと思う。

「あの時は別れて正解だったんだよ。お陰で周くんは運命の女性に巡り会えたんだし、赤ちゃんも生まれて幸せになれたでしょ?私も……」

そこで言葉が途切れ、何気なく窓の前に佇み夕闇を見つめた。
言いたいことは喉元まで出かかっているのに一瞬ためらい下を向いた。

「凪…俺は…」

「…私にとって、鷹臣は運命の相手だと思う」

数秒の時間を要して周くんが小さく呟いた声に被せるように私は顔を上げ言い切った。
< 209 / 325 >

この作品をシェア

pagetop