悔しいけど好き
まだ残る少しの不安は鷹臣の笑顔と抱きしめてくれる優しい腕を思い出し消し去る。
今の気持ちを大切にしたいと思う。

「そうだと思いたい。未来のことは誰もわからないけどね」

「……もし、別れてしまったら、どうする?」

「ふふ、意地悪なこと聞くのね?」

「ああ…ごめん」

「そうね…別れてもきっと好きでいると思う。例え結ばれなくても相手が幸せならそれでいいって思える。それでもずっと愛してる。私もとうとう真実の愛ってものを知ってしまったかも……なんてね」

「……っ」

我ながらくさい台詞をよくぞ言ったものだと羞恥に駆られて笑って誤魔化した。
周くんも呆れて言葉も出ないんだろう、息を飲む気配だけして沈黙してしまった。

「周くん?」

笑い飛ばしてほしいから何か言ってよと思いながら呼ぶと後ろでドサッと音がした。
振り返ると鷹臣が真顔で佇んでいて驚いた。

「あ、鷹臣」

「今の言葉は本心か?」

「え?」

「やっぱり凪は奴が忘れられないのか?俺がどんなに想っても奴には勝てないのか?」

「たっ、鷹臣?」

ズカズカと近付いてきて私の両肩を掴み怒ったように聞いてくる鷹臣に驚いてスマホを落としてしまった。

「どうした凪?大丈夫か?」

スマホから聞こえる周くんの声に気が付いて目を落とす鷹臣の目は嫉妬の炎で揺らめいて肩を掴む手に力が籠った。

「いたい…」

つい顔を顰めて呟くと鷹臣はハッとした顔で手を離し後ずさる。

「また…俺は…」

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