悔しいけど好き
「鷹臣?」

痛い肩を摩り鷹臣を見れば頭を抱え眉根を寄せて苦しそうな顔をしている。
足元からは周くんが異変に気付いて焦った声が聞こえていた。

「凪!返事しろ!何があった!?」

「ごめん…」

「鷹臣!」

翻し足早に去っていく鷹臣を呆然と見送ってしまってスマホから聞こえる周くんの声に気が付いた。

「凪!凪!返事しろ!」

「…あ、ごめん周くん。何でもないの」

徐にスマホを拾い周くんに謝る。
どこから聞いてたのか知らないけど鷹臣はきっと変な風に勘違いしているんだろう。
後で誤解を解かないと、と、ふうっとため息を付いた。

「凪、大丈夫か?怒鳴り声が聞こえた。彼なんだろう?何もされてないか?」

「全然大丈夫。鷹臣ったら人の話ちゃんと聞きもしないで誤解してるみたい。馬鹿だよね、鷹臣の話してたのに」

「…誤解?さっきの話をか?」

「周くんとはもう何でもないって言ってるのに」

「凪…」

「あ、長々電話しちゃった上に変なこと聞かせてごめんね。こっちは大丈夫だから。今度赤ちゃんに会いに行くね。親子3人お幸せに!じゃまたね!」

早口でしゃべり電話を切ってまたついため息が出る。
もう、どう誤解を解こうかそれだけが頭を占めて周くんの声は聞こえなかった。

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