悔しいけど好き
……

さて、もうすぐお昼時。
鷹臣も戻ってくると連絡が来た。
外はますますどんよりと暗くなり今にも雨が降りそうで雨が降る前に戻ってこれたらいいけどと少し心配する。
伝票整理も終わって休憩時間だと思ってると後ろでバサバサと物が落ちる音がして振り向いた。

「美玖さん大丈夫ですか?」

慌ててしゃがみこみファイルを拾う美玖さんを手伝う。

「あ、ごめんね凪ちゃん」

苦笑いの美玖さんを見ると10冊以上の重そうなファイルに四苦八苦しているよう。

「ファイルしまいに行くんですか?手伝いますよ?」

「あ、大丈夫大丈夫。ちょっとバランス崩しただけだから。凪ちゃんも忙しいでしょ」

「ちょうどキリのいいところで終わったところです。こんな重いの大変でしょ」

そう言って半分のファイルを手に取り立ち上がった。

「でもあまり行きたくないでしょ?」

伺うように聞いてくる美玖さんに苦笑い。
最近噂のせいであの資料室に近付かないようにしてたのは美玖さんも知っている。
それでも何かとデータが詰まってる資料室に行かない訳にも行かない。

「大丈夫ですよ。鷹臣は外出中だし美玖さんと二人なんだから」

いくらなんでも女性二人でいるところを見ておかしな噂にはならないだろう。
いきましょと促すと美玖さんは安心したように頷いて一緒に資料室に向かう。
用心の為にドアを開けっ放しにしてファイルをしまった。

あ、そういえば欲しい資料があったはずだと探そうとしたらひょっこり顔を出した山本さんが美玖さんを呼んだ。

「あ、柳さんいた。部長が呼んでたよ」

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