悔しいけど好き
……

「はああ…っ!」

大きなため息を吐くとその瞬間に暗かった部屋がピカッと光った直後バリバリと大きな音がしてビクビクと肩を竦める。

ざーっと雨が窓に当たる音がして、雷かと気付いた時には全身が総毛立ってあの時のことを思い出し自分を抱きしめた。



「君の彼だってあれだけモテるんだから君以外の子とも遊んでるはずだろ?荒川もフラれても奴が好きだとぬかすくらいだしこっそり付き合ってるかもな?だから君も奴だけに囚われないで俺といいことしよう」

耳元に内緒話をするように顔を近づけ言われた言葉は私の力を剥ぎ取った。
それを見てにやりと笑った袴田専務が胸に当てた手に力を籠めようとした時、鷹臣が雷鳴と共に飛び込んできた。

力を無くした私はあの時、鷹臣が来てくれなかったらどうなってただろうと思うと触れられた箇所が気になりだし嫌悪感と違和感で居ても立ってもいられなくなって重い身体を起こしバスルームへと向かう。

服を脱ぎ熱いシャワーを浴びながら気が付けば触れられたところばかりをごしごしと洗っていた。
その内に涙が溢れ熱いシャワーに流されていく。


嫌だ…嫌だ…

鷹臣以外に触れられるのも…鷹臣が誰かに触れるのも…

「うっ…ううっ‥」

嗚咽が漏れだすともう止めようも無く項垂れたままシャワーの中で泣いた。
あの状況であんなことを言われて私の心はぐちゃぐちゃだった。
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