悔しいけど好き

後悔先に立たず

………


眠った凪を抱きしめ後悔が後から後から押し寄せてくる。
雷が鳴る度、雷鳴と共に飛び込んだ先の光景が、思い出したくもないのに頭に浮かんだ。
壁に体ごと押し付けられ逃げ場の失った凪に迫り体に触れる奴の姿がはっきりと目に写る。
頭に血が昇った俺は力任せに引き剥がし殴り倒した。

振り返り力なくしゃがみこみすすり泣く凪を見て怒りが身を纏う。
奴が上司だとかそんなの関係ない。
絶対に奴を許さない!

悪態をつく奴に再び殴りかかろうとした時山本さんに羽交い締めにされ、正木部長に手を押さえられた。

「神城!落ち着け!」

「うるせえっ!凪を酷い目に合わせた奴を庇うのか!?」

正木部長にも暴言を吐き暴れると左手を掴まれたまま胸ぐらを掴まれた。

「落ち着けといっている!ここはお前達が大切にしてる職場だろ!お前が暴れてこれ以上大事にするとあらぬ噂を立てられ余計に傷つくのは羽柴だ!」

低く押さえるように言い聞かせられはっとして入り口を見ると何人かが様子を伺っていた。
怒りに任せて暴れていたら被害者の凪も好奇の目に晒される。


「………」

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