悔しいけど好き
山本さんに連れられ行った先は会議室だったがそこに正木部長も奴もいなかった。

何でいないのか聞けば彼らは別の部屋で事情を聞いているという。
何で俺を同席させないのか詰め寄ると、お前は頭に血が昇って話どころじゃ無くなるだろう!と逆に叱責された。

悔しいけど確かに奴を目の前にして冷静ではいられない。
何度奴を張り倒したって気は収まらないだろう。
ちっと先輩の前だというのに舌打ちをして、頭をかきむしりイライラと窓辺に向かう。
雨が激しく打ち付ける歪んだ向こうを見ながら冷静になれと自分をなだめようとしたが上手くいかない。

奴はきっと自分のいいように言い訳してるに違いない。
正木部長がそれを鵜呑みにするとは思わないが凪を侮辱する奴の顔が容易に思い浮かばれてギリギリと歯噛みした。


「俺らも、様子が変だとわかってたのに早く部屋を覗いていたら羽柴は大事には至らなかったかもしれない。すまなかったな…」

俺の背中に投げ掛けられた言葉は悔恨の念が込められていて、山本さんを見遣ると机に浅く腰掛け項垂れていた。

「いえ…全部俺が悪いんです。凪を守るつもりで予防線を張ってたつもりなのに逆にあんな奴に興味を持たれてしまった…」

顔を歪ませ地面を睨む。
後悔してもしきれない。

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