悔しいけど好き
「お前たちは彼らの恋愛沙汰に巻き込まれたってことだ。…悪いな、それを聞いたのが昨日の夜で、朝はお前外回りでいなかったし、やっぱり電話でもメールでも先にしとくべきだった」

「……いえ…昨日の今日じゃ対策なんてできません。結局、火種を撒いたのは俺だった…」

何がどうなって荒川が俺を好きになったかはわからない。
秘書課の荒川と会う機会など数回しかなかったが、俺が荒川に好かれるようなことが無ければ袴田も俺にも凪にも興味は持たれなかった。

結局、俺が居なければ凪が危険な目に合うことは無かった。
俺が凪を好きにならなければ…。



就活時代、凪を一目見た時から気になってた。
説明会で皆が緊張と不安の中、説明を聞いていた凪は好奇心いっぱいの目でメモを取りながらそれを聞いていた。
斜め後ろからその横顔が視界に入り目が離せなくなった。
面接試験、入社式、研修と見かける度にはつらつと笑顔で周りと話してる凪に俺はきっとすでに恋をしていたと思う。
それが同じ営業に配属されて、ライバル心むき出しで俺に突っかかってくるようになり、なんだこいつと思ったりもしたがひた向きに仕事に取り組む凪を好ましく思っていた。
休むこともせずフラフラになりながらも意地になって仕事を続ける凪を相当心配もした。


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