悔しいけど好き

ムキになる凪が俺に勝とうと躍起になってるのも知っていた。
俺が仕事も無理させて、付き合っても傷つけ危険な目に合わせてしまっている。

俺は凪にとって疫病神なのかもしれない。

俺と出合わなければ凪はもっと穏やかに何事も無く生きてこれたのかも知れないと思うと、頭の中に思い浮かんだのは……

「別れた方がいいのか」ということだった…。




「正木部長には朝相談したんだ。お前からも羽柴の事頼むと言われてたしな。俺らも出来る限りの事で羽柴を見守って来たわけだし、今回の事は悔やまれるけど後は正木部長が何とかしてくれるはずだ」

「ええ…」

山本さんの言葉はほとんど頭に入ってはこなかった。
なま返事をして窓に背を預け、目頭を押さえ自分が思い浮かんだ答えに愕然とした。
凪と別れるなんて出来るのか?
こんなに、愛しているのに…。
またゴロゴロと唸りを上げる雷が窓に振動を与え、それに呼応するように体が震えた。


沈黙が訪れ暫くした後、ガチャリとドアが開き反射的に顔を上げると正木部長が入ってきた。

「奴は!どうなったんですか!?」

正木部長に足早に駆け寄り詰め寄ると一瞬仰け反った正木部長は静かにドアを閉めた。

「袴田専務は、社長秘書が迎えに来て帰って行かれた」

「なっ!?帰したんですかっ!?」

あんな奴警察に突き出せばいいものをただ返したなどとそんな甘い事をしてまた凪に何かしたらどうしてくれるんだ!

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