悔しいけど好き
「鷹臣、正木部長なら安心して任せられるから待ってようよ?」

「俺は任せられないってか?」

ギロリと睨まれ図星を突かれ苦笑い。

「そうじゃないけど…っくしゅん」

急に鼻がむずむずしてくしゃみをすると鷹臣はハッとしたように私を抱え立ち上がった。

「きゃあっ!ちょっと、鷹臣?」

「せっかく温まったのに、ずっとそんな格好してたら風邪をひく」

そう言ってずんずん歩き出し部屋へと連れてかれベッドに座らされた。
パジャマはどこだ?と後ろを振り向きクローゼットを開けた鷹臣の背中を見つめてると、私は急に怖くなりぽつりと言葉を投げかけた。

「……抱いてくれないの?」

「…え?」

振り向きざまギョッとした鷹臣は持ってた私のパジャマをポロリと落とす。

「あんな人に触れられて抱く気にもならないか…」

ただ少し触られただけ。それ以上は無かった。
でもおぞましい記憶が蘇って自虐的なことを言って目を伏せる。
鷹臣に大丈夫と言っておきながらやっぱり私は大丈夫じゃない。
触れられた胸を無意識に押え下を向いていると鷹臣の脚が見えた。
鷹臣は跪き私の顔を覗き込む。

「何が、私は大丈夫だよ。そんな泣きそうな顔して」

「…うん、全然大丈夫じゃない」

素直に言ってほろりと零れた涙を、拭うように鷹臣の大きな手が両手が頬を包みこむ。

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