悔しいけど好き
「鷹臣は左利きでしょ?だから最初に触れられるのは私の右側で、でも、あの人は右利きだから左側を触れられて凄く違和感があったの」

「え…?」

「触れられ方がまるで違って凄く嫌だった」

嫌悪感を思い出し顔を歪め、私は鷹臣仕様の身体になってしまったと言いたいのだけど鷹臣は険しい顔をして私を見下ろした。
やっぱり怒ったじゃないと思いつつ鷹臣の頬に触れる。

「それは…俺みたいに左利きならいいってことにならないか?」

頬に触れる手を握り不貞腐れるように言う鷹臣にちょっと笑ってしまう。

「同じ左利きでも鷹臣とは違う。触りかたも、愛しかたも…鷹臣意外受け付けられないってこと」

「凪…」

「だから忘れさせて何もかも…鷹臣の身体だけを覚えさせて…」

鷹臣は少し驚いた顔をして私を見つめ、ごくりと喉を鳴らしキスを再開させた。

「俺もだ…」

「…え?」

「俺も…凪意外受け付けない。凪が俺の全てだ…」

「う…ん」

キスの合間に吐息混じりに囁かれ、より一層濃厚さが増して頭が蕩けてくらくらする。

「愛してるよ…凪…」

「…私も…愛してる」


全てを委ねた私を鷹臣が包み込む。
熱い吐息、優しい手付き、耳をくすぐる愛の言葉、蕩けるような唇、情熱のこもった身体、全てが私に刻まれ、嫌な記憶は塗り替えられて私の身体は鷹臣だけを覚えていく。

鷹臣はずっと私のそばにいてくれる、きっと自信をもって鷹臣の隣に立っていられる。
愛されてる実感が私を強くしてくれる気がした。
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