悔しいけど好き
「よろしいですか?」

見慣れない30代くらいの男性が声をかけてきてふいっとそちらを向いた。

「私は弁護士をしております、神城佳佑(かみしろけいすけ)と申します」

「かみしろ…?」

その名字に鷹臣を見ると私を見て頷いた。

「俺の従兄、今回の件で凪の代わりに対応してもらってたんだ」

「え…?」

「鷹臣の彼女を見てみたいとは思っていたが、こんな形で会うとは思わなかったよ。辛い思いをしたね。ただ、この件はきちんと私が対処させてもらいます。君は何も心配しなくていいからね」

優しく微笑まれその顔が何となく鷹臣に似ている気がしてぽーっとその笑顔を見つめてると脇を鷹臣につつかれた。

弁護士の神城さんに座って話をしましょうと促され皆席に着くと今まで話し合われてたことを説明してくれた。

聞けばあの資料室にモニターが設置されていて一部始終写ってたそうで、そのお陰で私が説明しなくても済み、袴田専務はそれを見て全て事実だと認めたそうだ。
鷹臣は何も教えてくれなくてじろりと睨むと目を逸らされた。

「それであなたの意思を再確認させていただきたい。鷹臣からはあなたは被害届は出さずに慰謝料もいらない、二度と自分の前に現れなければそれでいいと聞きましたが合ってますか?」
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