悔しいけど好き
鷹臣に奴をどうしたい?と聞かれ私が答えたそのままを弁護士さんは言っていて、その通りだと頷いた。

それでは話し合いした通りにと説明されたのは、袴田専務の会社としての処分は懲戒免職、社長はこの件が全て終われば息子を海外に飛ばし二度と私の前に現すことはないという。

さすがにその処分は重いのでは?と目を見開いたけど鷹臣がそれくらい当然だ!と息巻くので思わず口をつぐむ。
仕事を辞めさせられ日本からも追い出される形になってそこまでしなくても…とつい思ってしまう。

「本来なら被害届を出し裁判をして彼の罪をさらけ出さねばならないところです、逆にそれくらいで済むことになってあなたに感謝してると思いますよ?だから気に病むことはありません」

弁護士さんは私が気にしてることに気がついて優しくフォローしてくれる。
その気の使い方はさすがだなぁと思う。
他にも事細かにわかりやすく説明してくれてこの人に全てお任せできると安心できた。

社長も親として社長として何か形になる謝罪をしたいと申し出てくれたけどそれも丁寧に断った。

「私は、この職場が好きでただ安心して仕事が出来ればそれでいいんです」

ただそれだけが望みだと言うと社長は社員がそんな事を言ってくれるとは社長冥利に尽きるとかなんとか、感動しきりでちょっと照れくさくなった。
ほんとにあの専務と親子なかと疑ってしまうくらい誠実で穏やかな社長は最後まで謝罪と感謝を何度も口にして他にも同じ事がないように社内啓発に取り組むと仰って帰っていった。


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