悔しいけど好き
「ゴメン…アニキに帰り際、彼女が俺に惚れたらもらうね?とか言われて正直ムカついた」

「え~?」

従兄さん、その冗談はさすがに鷹臣に言うには度が過ぎるでしょう?
鷹臣も本気でそんなこと従兄さんが言うわけないのに真に受けちゃってとちょっと呆れる。

「だけどまた頭に血が昇らないように気を落ち着けようとしてるのに凪はしきりにアニキを誉めまくるし…」

「あ、そうだったの?黙ってたのはそのため?」

「…ああ」

「なーんだ、そんな我慢しないで言えば良かったのに」

「何を?」

「凪は俺しか愛せない、とか?」

言った瞬間がばりと身体を離され両肩に手を置いた鷹臣は目を丸くしてる。

「そうか、その手があった…」

「え…?」

なんだか不機嫌は飛んでったようで、独り言のように呟いて鷹臣は不敵に笑った。

「そうだよな、凪は俺しか愛せないんだよな」

「そ…そうですよ?」

なんとなーくなんとなーく背筋にヒヤリとしたものが通った感触は気のせいと思いたい。

機嫌が直った鷹臣にまた頭を抱えるように抱きしめられ頭上にキスが降る。
くすぐったくてふふと笑って顔を上げるといとおしそうに目を細め見つめられていた。

「ずっと一緒にいよう凪、二人で生きていこう」

「うん…」




ずっとずっと一緒に…


鈍感な私はそれがプロポーズの言葉だと気付くのはもう少し後になってから……









< 261 / 325 >

この作品をシェア

pagetop