悔しいけど好き

帰省


時は過ぎ、

師走の慌ただしさに気を取られてるうちにクリスマスも過ぎ、年末の仕事納めを終えお正月休みに入った私は今日汽車に乗り実家に帰る。

走り出した車窓から見える外は、木々はすっかり葉が落ち色を失って冷たい風が吹き荒ぶ。
そんな流れていく景色を見ながらふうっとため息を付いた。

「何ため息なんかついてんだよ、ほら」

「ん、ありがと」

汽車に乗り込む前に買った温かいココアを私に差出し隣に座ったのは鷹臣。
隣に座ってコーヒーを飲んでる鷹臣はしっかり私に付いてきて二人でまた実家に行くことになった。

鷹臣は自分の実家に帰らないのか聞くと「俺はいいんだ」と言ってあまり帰りたがらない。
それでも少しは顔を出した方がいいんじゃないの?というとじゃあ今日、私の実家に帰る前にちょっとだけ顔を出そうと突然決まってさっき二人で行ってきたばかりだった。
初めての鷹臣の実家に緊張して今やっとホッとできたのでため息を付いたのはそのため。

鷹臣の実家は高級住宅街の中にあって凄く立派な邸宅で度肝を抜かれた。
お父さんは有名企業の重役だそうで鷹臣は一人息子。専業主婦のお母さんは鷹臣を溺愛し、未婚の妹である叔母と二人で何かと世話を焼いてくるそうだ。
それが嫌で家を出た鷹臣は帰りたくないそう。
今日は突然の来訪の為、叔母さんはいなかったのだけどいたらややこしいことになったから良かったと鷹臣がぼやいていた。

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