悔しいけど好き
そんなことされた覚えのない私は声が裏返りながら鷹臣を凝視すると鷹臣もびっくりした顔をした。

「え?お前覚えてないとは言わせないぞ?この間、ずっと一緒にいようって言ったじゃないか!二人で生きていこうって言ったらうんって頷いただろ!」

その言葉に記憶を辿りハッと思い出す。
そう言えば袴田専務とのことが終わって帰った後にそんなこと言われた記憶が…。
でもあれってプロポーズ?そんな雰囲気無かったように思うけど?  

「え?あれがプロポーズだったの?全然気づかなかったよ!」

「…お前~二人で生きようなんてプロポーズ以外にどういう意味があるんだよ」

顔を引きつかせ薄目で睨んでくるけど負けじと私は言った。

「結婚のけの字も出さなかったじゃない!それにもっとロマンチックにとか出来ないの!?」

高級レストランとかで大っきなバラの花束用意してとか、そんな贅沢はいらないけど、一生に一度の事なのにそれが話の流れの中でのことでさらりと言われたらときめきも何もあったものじゃない。

「悪かったな!ロマンチックじゃなくて!大体前から言ってるだろ?凪の実家に行ったときにだって言ったぞ?」

「それ!私にじゃなくて家族にでしょ?私にちゃんとプロポーズをしてよ!」

どんどん喧嘩腰になって二人の間に剣呑な空気が漂ってくる。
婚約指輪をもらったのに幸せも嬉しさもどこかに置き去りにされたよう。
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