悔しいけど好き
「鷹臣!それは言わない約束でしょ!」

鷹臣が何を言おうとしてるのか分かって慌てて声が大きくなる。
私が袴田専務に襲われた話しは家族には報告してない。
心配かけてしまうから実家に帰っても絶対言わないでと鷹臣に約束させたはずなのに!こうもあっさり破られるとは思わなかった。

「凪、家族に隠し通すなんて出来ないよ」

顔を上げた鷹臣の真剣な顔に息を呑んで言葉が出ない。

「どういうことだ?凪?」

海里兄さんの低い声が冷気と共に振ってきてびくりと肩が跳ねる。
お父さんも険しい顔でお母さんは心配そうに私たちを見つめる。

「聞かせなさい凪」

「え…と…」

言葉が出なくてどうしたらいいか考えあぐねていると鷹臣が肩を掴み頷いた。

「俺が説明します」

「でっでもっ!」

「凪は黙れ」

兄のひと言に押し黙るしかなく、鷹臣は起こった出来事の一部始終を心配そうに見守る家族に話して聞かせた。


・・・・


皆が沈黙する中、話しを聞いて怒りだしたのは、兄でもなく、父でもなく…弟の湊斗。

「なんでそんな奴に目付けられてんだよ!姉ちゃん泣かすようなことするな!」

鷹臣に食って掛かり胸ぐらを掴む湊斗に鷹臣は抵抗もせず目を伏せごめんと呟く。

「みっ!湊斗!落ち着いて!」

慌てて湊斗を引き剥がすと海里兄さんが暴れる湊斗を押えて一旦落ち着かせた。
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