悔しいけど好き
………
あの話があってからきっちり一か月後、正木部長に会議室に呼び出された。
鷹臣も一緒に。
「羽柴、そろそろ返事が欲しい。意思は固まったか?」
「…はい」
「意思?」
なんのことだかわからない鷹臣は私の顔を見て首を捻る。
正木部長は構わず頷いた。
「うん、聞かせてもらおう」
「私…営業には戻りません。アシスタントを続けます」
「えっ!?」
「だから、鷹臣の持ってる私の担当だった営業先をみんなに振り分けてください」
「凪!何いってんだ!?」
「神城落ち着け」
鷹臣は驚愕して私に詰め寄るのを正木部長が止める。
「羽柴、それでいいんだな?」
「はい!」
力強く頷くと鷹臣は納得できない顔で頭をガシガシとかき回した。
あの後、何で相談しないんだよ!と、鷹臣に詰め寄られ、俺の努力が水の泡だ!とかなり怒ってたけど、私が既に心に決めていて決断に揺るぎないということを悟ると渋々諦めてくれた。
……
「先輩がこの春寿退社するんだ。だからそれに続いてすぐには辞めれないし専業主婦ってがらでもないし、だから仕事は続けるの」
「そう、無理のないようにね?」
「うん」
お母さんの心配掛けないように元気に返事をして鷹臣を見れば、渋い顔をして言いたいことがあるようで、だけど飲み込んでくれる。
その優しさに漬け込んで私は有無も言わせない笑顔で鷹臣に笑いかけると諦めたようにため息をついていた。