悔しいけど好き
さて、名残惜しいけどもそろそろお暇しようかと腰を上げまた会いに来るねと美波ちゃんに言って敦子さんにも挨拶した。
ぜひまた遊びに来てと優しい笑顔で言われ嬉しくてはい!と勢いよく返事をする。
その間、鷹臣が何やら周くんと話しをしていた。
何話してるんだろう?と気になりつつも玄関を出ると鷹臣が立ち止る。

「ちょっと用事があるから先帰っててくれ」

「え?用事って?」

鷹臣は何も言わずに帰る方向とは反対の方へと歩いて行く。
ここは鷹臣の知らない土地だから用事なんてある訳もないのにどこへ行くのか?

「鷹臣待ってよ!」

「待て待て、無粋なことはするなよ、帰るぞ」

鷹臣を追いかけようとすると海里兄さんに止められ強引に引っ張られる。

「ちょっと!無粋って何よ!」

「男にはしなくちゃいけないことがあるんだ。女のお前には分からんだろうがな」

「何よそれ!ちゃんと説明してよ!」

何かを知ってるらしい海里兄さんに喰って掛かるも軽くあしらわれ、そうしてるうちに鷹臣の姿は消え私は強制的に実家へ戻された。

外に出るなよ!と海里兄さんにきつく言われ不貞腐れながらおばあちゃんの隣に座った。
おばあちゃんと他愛無い話をして鷹臣を待ってるけども一向に帰って来ず、そのうちお母さんに夕飯の支度を手伝わされ時間は過ぎていく。

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