悔しいけど好き


凪たちの実家の反対側をまっすぐ行けば神社がある



凪たちと別れ、行った先に奴に言われた通りに小さな神社があった。
人がいない神社はしんとしてまだ4時くらいなのに夕日は傾き薄暗い。

はあっと吐く息が白くもやもやと立ち上がり消えていく様を何度か見てるうちに、ザクザクと砂利を踏みしめる音が聞こえた。
振り向けば宿敵の奴がいる。

「やあ、待たせたね」

「いえ、呼び出してすいません」

小笠原周。
凪の幼馴染で初恋の相手で最初の男。
別れた後も兄として今も凪の心の中にいる俺の憎っくき天敵。

「どうしたのさ、凪のいないところで話がしたいなんて」

薄く笑う奴は余裕の表情で俺を見据える。
俺は奴と体を向き合わせ対峙した。
ついつい癖になってしまった睨みを奴に向けひとつ大きく息を吸った。

「すいません!俺、凪を辛い目に合せてしまいました!」

「え?」

勢いよく頭を下げる俺に面食らったのか小さく疑問の声を上げた奴を俺は頭を上げ見据える。

「どういうこと?」

低く唸る奴の目はもう笑っていなく、鋭い眼差しが俺を突き刺す。
俺は凪の家族に説明した話を奴にも聞かせた。


話し終えた頃、ふうううっと震えるため息が奴の口から零れる。
奴の拳が握りしめられるのを俺は何気なしに見ていた。

「それを…俺に聞かせたということは、覚悟は出来てんだな?」

「ああ」

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