悔しいけど好き
「いてっ!」

「あっごめん!」

横を向いたら丁度鷹臣の腫れてる頬に当たったみたいでつい声を漏らした鷹臣を見やり頬を撫でる。
腫れはだいぶ引いたけど赤くなってるそこは痛々しくてつい眉根を寄せた。

「ほんと、バカね…生真面目なことしなくてもいいのに」

「え?」

頬の腫れは転んで出来たせいではないことぐらい私だって気付いている。
誰に殴られたのか、なぜ殴られたのか?
考えられるのは一人だけ。

「…いいんだ、俺の気が済むようにしただけだから。おかげですっきりした」

二カッと笑う鷹臣に、もう…とため息しか出ない。
そんな鷹臣を見つめていたら顎をくいっと上げられキスが降ってきた。

「俺が傍に居る、ずっと。だから、よそ見はするなよ?」

「それ、そのままお返しするわ…」

キスの合間に紡がれるのはヤキモチ妬きらしい鷹臣の言葉。
そんな言葉にも嬉しいとか思ってしまう私は幸せ者だなぁとしみじみ思う。
私も同じように焼きもち妬くけどね。

かくして、私たちは新しい新年を甘い甘いキスで迎え、幸せな一年、どころか幸せなこの先の未来を予想し眠りに付くのだった。

めでたしめでたし。






・・・

・・・

・・・

ぎゅっ


「いてっ!」

「ここ実家!これ以上はダメ!」

「ちぇっ…いいじゃんちょっとぐらい」

「ちょっとですまないでしょうが!」

「チッ…わかった。帰ったら、覚悟しろよ?」

押し倒された状態で上から覆いかぶさる鷹臣がニヤリと不敵に笑う。
そういう時の奴の顔は悔しいくらい色っぽい。
私は負けじと蕩けた笑顔で言い返した。





「うん、覚悟しとく」


・・・




END

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