悔しいけど好き
そして年明け、とうとう私と正木さんのことを皆に打ち明ける日が来た。
皆どんな反応するだろうと不安に思いながら、正木部長に呼ばれ隣に立った。

「柳が退職する事になった。ちなみに今月中には俺と籍を入れる。3月には結婚式を挙げるから皆招待するので予定を空けといてくれ。腹には子供もいるから柳を気遣ってやって欲しい頼む。話は以上だ」

「………」

正木部長の淡々とした口調に皆がぽかんとした顔をしている。

「うそ…」

「うっわ…」

話を理解してきたらしい人達の否定的な呟きについ俯きがちになる。
そうよね、そうだよね…。

「おめでとうございます!」

パチパチと拍手が聞こえ、顔を上げると神城くんと凪ちゃんが満面の笑みで拍手してくれている。

「…おおっ!スゲー!おめでとうございます!」

「正木部長と柳さんが?」

「こんなところにお似合いのカップルがいたとは!」

「し、知らなかった!うわぁ素敵!」

「神城と羽柴カップルに隠れて全然気付かなかった!」

おめでとう!おめでとう!と盛大な拍手と共にお祝いの言葉が飛び交う。
誰もが笑顔で私達を祝福してることに感動して涙が溢れた。

「あんなに、皆が祝福してくれると思わなかった…」

「何も心配する事無かっただろ?」

仕事に戻っていく皆を見ながら満足げに頷く正木さんを涙を拭きながら見上げた。

「美玖は考え過ぎで取り越し苦労が多いんだ。そのうち心配し過ぎで剥げてくるぞ?」

「えっ!?」

ギョッとして思わず頭を押さえるとククッと笑いを堪える正木さん。
からかわれたのだと気付いてついぷくっと膨れてしまった。


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