悔しいけど好き
食堂の反対側の奥、人もあまり通らない廊下の突き当たりで稲葉は待っていた。
「わかってると思うけど…」
「わかってる。凪を泣かすような事はしない」
稲葉がみなを言う前に俺は被せるように言った。
稲葉は俺が原因で凪が辛い思いをしてきたのを知っている。
俺はまた同じような事をしてると思ってるだろう。
心配するのも無理はない。
「心配させて悪いな。奴は聞き分けなくて手こずってるが凪に誤解されるようなことにはなってないから」
「…それ本気で言ってる?」
「え?」
稲葉を安心させようとして言ったはずなのに余計に彼女は不機嫌になり俺を睨んでくる。
「端から見てるこっちがムカつくほど仲いいわよあなたと後輩ちゃん。全然懲りてないじゃない。凪が気にしてないわけないでしょ?しかも新人くんにまでおちょくられて情けないったらありゃしない。もっとビシッと言えないの?凪は俺の女だ手を出すなとか!」
「えっ…」
「大体あんた達もう夫婦なんだから会社だからって遠慮してないでもっといちゃついたっていいのよ!真面目すぎなのあんた達は!もう少し独身者に夢を与えなさいよ!」
「はあ…?」
怒濤の剣幕で捲し立てる稲葉を唖然と見ていた。
確かにビシッと奴らを止められないのは俺の不徳の致すところだが夢を与えろなんてそんなこと言われてもなあ…。
「凪だって!ほんとは会社でも夫婦でいたいって思ってるわよ!」
「え?」
「凪はお堅いところあるから自分からはあんたに近付けやしないのよ。あんたがリードしなさいよ!」
「ほ、本気で言ってる?」
「あんたあたしを疑う気?」
「い、いや…」
「ぬるい事やってると誰かに凪を持ってかれるわよ?」
ドスの効いた脅しが俺の胸に突き刺さりうっとついよろけそうになる。
そんな馬鹿な?と思いつつ、前にも散々文句言われたことのある俺は言い返すことも出来なかった。
稲葉の迫力には到底敵わない。
「しっかりしてよね!」と、ハッパを掛けられ稲葉は行ってしまった。
「……」
なんとも言えない何かが胸をモヤモヤさせてオフィスに戻れば、凪は自分のデスクで元村次長とまだ話していた。
椅子に座る凪が見上げながら笑顔を見せて次長と話している姿は益々俺をモヤモヤさせる。
「ありがとう羽柴さん、助かったよ」
「いえ」
俺が近付くと去っていく元村次長と目が合った。
笑みを浮かべ流し目で見てくるそれは挑戦的にも見えるし何考えてるかわからない表情だった。
いや、ただ単に俺が気にし過ぎなのかも知れないが…。
「わかってると思うけど…」
「わかってる。凪を泣かすような事はしない」
稲葉がみなを言う前に俺は被せるように言った。
稲葉は俺が原因で凪が辛い思いをしてきたのを知っている。
俺はまた同じような事をしてると思ってるだろう。
心配するのも無理はない。
「心配させて悪いな。奴は聞き分けなくて手こずってるが凪に誤解されるようなことにはなってないから」
「…それ本気で言ってる?」
「え?」
稲葉を安心させようとして言ったはずなのに余計に彼女は不機嫌になり俺を睨んでくる。
「端から見てるこっちがムカつくほど仲いいわよあなたと後輩ちゃん。全然懲りてないじゃない。凪が気にしてないわけないでしょ?しかも新人くんにまでおちょくられて情けないったらありゃしない。もっとビシッと言えないの?凪は俺の女だ手を出すなとか!」
「えっ…」
「大体あんた達もう夫婦なんだから会社だからって遠慮してないでもっといちゃついたっていいのよ!真面目すぎなのあんた達は!もう少し独身者に夢を与えなさいよ!」
「はあ…?」
怒濤の剣幕で捲し立てる稲葉を唖然と見ていた。
確かにビシッと奴らを止められないのは俺の不徳の致すところだが夢を与えろなんてそんなこと言われてもなあ…。
「凪だって!ほんとは会社でも夫婦でいたいって思ってるわよ!」
「え?」
「凪はお堅いところあるから自分からはあんたに近付けやしないのよ。あんたがリードしなさいよ!」
「ほ、本気で言ってる?」
「あんたあたしを疑う気?」
「い、いや…」
「ぬるい事やってると誰かに凪を持ってかれるわよ?」
ドスの効いた脅しが俺の胸に突き刺さりうっとついよろけそうになる。
そんな馬鹿な?と思いつつ、前にも散々文句言われたことのある俺は言い返すことも出来なかった。
稲葉の迫力には到底敵わない。
「しっかりしてよね!」と、ハッパを掛けられ稲葉は行ってしまった。
「……」
なんとも言えない何かが胸をモヤモヤさせてオフィスに戻れば、凪は自分のデスクで元村次長とまだ話していた。
椅子に座る凪が見上げながら笑顔を見せて次長と話している姿は益々俺をモヤモヤさせる。
「ありがとう羽柴さん、助かったよ」
「いえ」
俺が近付くと去っていく元村次長と目が合った。
笑みを浮かべ流し目で見てくるそれは挑戦的にも見えるし何考えてるかわからない表情だった。
いや、ただ単に俺が気にし過ぎなのかも知れないが…。